夏休みを通して
大学院での研究の方向性を一から考え直していた。
会う人、会う人に
「日本語教師にならないんだって??」
と、驚きや心配の声をもらう。
だから、もう少し、詳しく、今後の研究の方向性を説明します。
(研究の方向転換はこれからも多少はあり得ますが、現時点でのってことで)
(話の脈略がわからないという方、すみませんがこちらをご一読くださいまし➡http://mamepoem.blogspot.com/2013/08/blog-post_8.html)
◎ゴールは語学講師ではないということ。
私の最終目的地が、日本語教師という語学講師ではないことに気がついたのです。
教室の中で、新しい日本語表現を教える。それだけが、日本語普及のカタチではないことを、大学院に入ってしみじみ感じているのです。
日本語クラスでの経験は、そんな想いを強くしてくれました。
教室の先生だけが、言葉の普及を担っていくだけでは、
韓国、中国の言語政策に押されて、日本語は衰退していく。
日本語の魅力を発信すべきは、語学教師のみならず、
モノを作る人、モノを売る人、歌う人だっていいし、書く人だって、描く人だっていいじゃない。
日本語教育は、”かけがえのないもの”として認知されていないがために、
この業界と手を組んでいる他業界もITや出版関係などに限られているような感覚があります。
うまくチカラを発揮し切れていないような気もするんだよね。
ことばって、どこにでもあるのに。
◎目的や信念はさほど変わっていないこと。
日本語をなぜ広めたいのか?
日本語を普及することがどうして大切なのか?
この問いに対する答えは決して昔から変わっていないんです。
日本語の国際的な広がりが、
日本理解、日本人理解につながる。
日本のファンや理解者、日本人との深い繋がりを持つ人が増えていく。
繋がりを生む、という点では、英語でコミュニケーションを行っても可能ですね。
ここでは、前者の、「日本人理解」を強調したいところです。
言葉は文化を形作るものだと言われます。
文化という言葉には無数の定義があると言われるんですが、ここでは『生活様式」くらいに捉えてみてください。
私たちの暮らし方そのもの、それに、暮らし方の裏にある価値観、それは言葉に表れていると思うんです。
”もったいない” ってその代表例だよね。
”MOTTAINAI”という言葉が世界に広まった背景には、
日本が育んできた価値観に対する世界の共感があるんじゃないでしょうか。
◎ 私なりの切り口を。
前に「面白いサカナを釣りたくて」という記事で、こう書きました。
(記事はこちら
http://mamepoem.blogspot.com/2013/06/blog-post_388.html)
豆×日本語
この2つが交わる日がきっと来る。
そこが、とりあえず、今ところ目指すべきゴール。
今、素直に、この接点について真っ正面から向き合って、研究を始めようと企んでいるところです。
食文化を日本語で普及する意義ってなんだろう?
そんな私の中の疑問に、答えられるテーマ探しをしてきました。
研究っていうものは、とりあえず、今までの偉人たちが懸命な努力で明らかにしてきたものをかき集めて、関心のあるトピックに対して、
どんなことが明らかになってきたか、を調べることから始まります。
さて、
日本語と食文化に関してどんなことが明らかになってきているでしょうか?
私の思考の整理にもなるのでここでまとめさせてください◎
まず、明らかになっていることは
日本語は、食品の味やにおい、テクスチャー(食感)を評価するための表現が非常に多彩な言語であるということ。
日本語テクスチャー用語の収集を行った 早川文代氏によれば、
日本語テクスチャー表現は445語にまとめられたそうです。
これは、フランス語の226語、フィンランド語の71語と比較すれば、圧倒的に数が多いと言えます。
さらに早川氏は、445の用語のうち、
オノマトペ(擬音語・擬態語)の多さに注目しています。
商品のパッケージや広告、レストランのメニューをみても、
食感や季節感を出す用語がズラッと並んでいることに気がつきます。
では、「新作 味」でヒットした
ハーゲンダッツの新作の紹介記事を例に。( 宣伝じゃないよ!!)
外はカリっと、中はふんわり焼きあがった『フレンチトースト』。ひとくちほおばると、やさしい甘さで幸せな気分になれる、朝食やブランチの定番メニューです。
(中略)
今回発売されたクリスピーサンド「メープルフレンチトースト」は、メープルソースが入ったフレンチトースト味のアイスクリームに、卵とミルクの風味豊かなコーティングを施し、サクサクとした食感のウエハースでサンドしたもの。
といった具合に、オノマトペで食感が説明されておりました。
私は、日本人理解の一環として、日本人がこういう言葉に「そそられる」ということを日本語を勉強している留学生に伝えてみるところから始めようと思ってる。
悲しいことに、こんなに食べ物の美味しさを的確に表現してくれるコトバに限って、日本語のクラスではちゃんと教えていないんです。
日本にきて、ラーメン屋さんのメニューに「あっさり・こってり」ってあっても、うまく選べない留学生がたくさんいるんじゃないかなぁ、と思っています。(ここらへんはちゃんと証明する調査が必要になってくるけど、そうに違いないと思っている。笑)
日本人理解だけじゃありません。
早川氏の研究の話に戻りますが、
日本語には「ねばねば」「ねっとり」などの粘りの表現や「ぷるん」「ぷりぷり」といった弾力にまつわる表現がが多いらしいです。
このことを日本で食べられている食材(納豆、とろろ、こんにゃく)や、私たち日本人の嗜好が背景にあると推測しています。
どうでしょうか。
食文化の発信に、日本語のチカラが加われば、
私は、文化の受け手も嬉しいと思います。
ソト(日本)からモノ(食材)がやってくるだけじゃない。
「日本語」というレンズから、
食の多彩さを見出す楽しみ。
それは日本食に限らず、受け手側の身近な食にも彩りを与えていく可能性を秘めていると思う。
豆腐も食感は多彩だよね。そんな想いに駆られて描いた絵です。
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どこかで読んだ記事に、
研究者は理想主義者だ。 とあった。
その通り。いまこの記事の中で、私の描く、「理想」を述べたに過ぎない。
でも、「理想」を示す人がいなくなったら世の中暗くなりそうで。笑
「理想」は「現実」ではないから、何通りあっても構わないし。
「現実」の向かう先 が
いま誰かが「理想」としているところだったりもするでしょう。
だから「そんなうまい話あるもんか」「身の程知らずめ!」なんて言われても、(いまのところ、このブログの読者の方は優しいことは知ってますが)今後も研究活動を綴りながら、私の「理想」を掲げていこうと思います。
参考
早川文代「テクスチャー(食感)を表す多彩な日本語」独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
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